
率直に言えば、浦和とミランとの差はやはり大きかった。
終始試合はミランに主導権を握られたまま終わったという印象を受けた。
現在のリーグの順位は浦和はJリーグ2位(確定)、対して、ミランはセリエA10位(暫定)である。
つまり、単純に言えば、日本の2位はイタリアの10位に徹頭徹尾主導権を握られる事しか出来ないということが分かったのである。
しかし、これは悲しむことではない。
課題が見えたのは間違いないからである。
今回の浦和レッズの日本サッカーへの貢献は計り知れないものがあると思う。
試合もミラン相手に守備ありきのフットボールをするのではなく(結果的に守備的にならざるを得なかっただけ)、普段通りのフットボールでこの戦いに挑んだことは素晴らしいことだった。
パスをつないで、少ないながらもチャンスを作る姿にはある種の感動すら覚えた。
そして、トヨタカップ始まって以来のブーイングを聞いたときには、レッズファンに畏敬の念を払わずにはいられなかった。
ここで、注意しなければならないのは、よくフットボールを知らない解説者やマスコミが
「今回の浦和はミランを本気にさせた」
と言っている事である。
こんな事を言っている解説者やマスコミを信じてはいけないということである。
彼らの文脈は、浦和の善戦により、あのミランが本気になった。というものである。
つまり、浦和が善戦する前は遊びであったということを意味している。
しかし、試合を観た感じでは、ミランは始めから本気だった。
おそらく彼らはミランを持ち上げるために発言したのだろうが、その発言が浦和をどれ程侮辱しているのかと気づいてないのである。
そして、準備段階を含め、始めから本気であったミランに対しても失礼にあたるということに気づけてないのである。
また、浦和はミランを1点に抑えたと称えている点も騙されてはいけない。
ミランがムリに2点目を取りに来なかった結果1−0というスコアになっただけである。
なぜ、ミランは2点目を取りに来なかったか??
それは、試合に勝つには1点で充分だからである。
彼らは相手を0点で抑えるという美しさや難しさを知っているのである。
イタリアでは1−0の試合を「完璧な試合」と形容する。
それを知らないマスコミが、あたかも浦和が頑張ったからミランを1点に抑えたという文脈を言いたがるのである。
僕らはこれらに騙されて、フットボールの本質の一側面を見逃してはならないのである。
これから、いかに日本の他のチームが浦和に続くかが日本のレベル向上に不可欠であり、今回浦和の得たものの素晴らしさや大きさを他のチームも共有できるようにならなければならないと強く思う。